本裁判訴状全文 -------------------------債権者側弁護士・柳原敏夫氏の作成した書面
当事者の表示 別紙当事者目録記載の通り
著作権侵害差止等請求訴訟事件
訴訟価格 金 三八万八二六〇円
貼用印紙 金 三八〇〇円
請求の趣旨
一、被告は、別紙書籍目録記載の著作物を出版、販売又は頒布をしてはならない。
二、被告は、その所有する別紙書籍目録記載の著作物の在庫品を裁断その他の方法により廃棄し、また被告がMOその他の記憶媒体に保存している別紙書籍目録記載の著作物の データのうち原告らが作成したデータを消去その他の方法により廃棄せよ。
三、被告は原告らに対し、金三八八二六〇円及びこれに対する本訴状送達の翌日から支払 に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
四、訴訟費用は被告の負担とする。
請求の原因
一、当事者
別紙当事者目録記載の二一名の原告らは、デザイナー、漫画家、或いはイラストレーターを職業とする個人又は法人であり、被告は書籍の出版・販売を主たる業務内容とする法人である。
二、権利の目的たる著作物及び著作権者
原告らはいずれも、左記の通り、別紙書籍目録記載の著作物(以下本件書籍という。検甲第一号証)に掲載された美術著作物の著作権者である(以下、これらの美術著作物を総称して本件著作物という)。本件著作物は、「マックでデザイン」という題名からも明らかな通り、コンピュータを使って美術著作物を制作した、いわばデジタル著作物であり、そのトータルは本件書籍に掲載した著作物のうち約41%(合計一一4頁÷総頁数267頁=0.4130‥‥)を占める。
記
本件書籍の掲載頁 著作権者
六〜七頁 藤森美能
三六〜四三頁 津熊清嗣
四四〜四七頁 鴨原幸男
五六〜六一頁 有限会社阪田量士写真事務所
七四〜七七頁 オプテック株式会社
七八〜七九頁 UFOデザインこと花城俊司
八二〜八三頁 有限会社西日本シール
一〇〇〜一〇一頁 福間晴耕
一〇二〜一〇五頁 駄場寛
一四二〜一四三頁 株式会社アイ・キユー
一五四〜一七五頁 叶精作
一七六〜一七九頁 上口睦人
一八四〜一八五頁 株式会社プレストジャパンアート
一九八〜一九九頁 横山弥生
二〇二〜二〇五頁 塚崎健吾
二二二〜二二三頁 株式会社八木スタジオ
二二六〜二三七頁 唯登詩樹こと加藤正
二三八〜二三九頁 寺田克也
二四〇〜二四九頁 細井敏昭
二五〇〜二六一頁 スタジオレッツこと遊佐光明
二六八〜二六九頁 福間晴耕
二七八〜二八一頁 谷口広樹(BISE)
三、被告の無断出版行為
平成八年九月ころ、原告らは被告の求めに応じて、本件著作物を「MAC DE DESIGN Vol.2」という書籍(以下本件出版物という。検甲第二号証)に掲載することを同意し、本件出版物は平成八年一二月二〇日、被告より日本のみならず海外において定価一万六千円の豪華本として出版された。なお、本件出版物はデジタルイラストの普及と啓蒙を謳い、及び原告らのデザイン技術のプロモーションを目的とするものであったので、原告らは本件出版物の出版にあたって著作権使用料を取らなかった。
ところが、その後、被告は、この種の出版物が商売になることを知って、今度は、本件出版物を表紙と題名だけ変更し、中身をそっくりそのままの形で本件出版物の廉価版(定価四七〇〇円)として出版することを企画し、平成九年八月三一日、本件書籍を、原告らをはじめとする本件出版物に掲載した著作権者たちに何のことわりもなく無断で、同じく日本のみならず海外において出版し、これにより少なからぬ不当な利益をあげたものである。
四、原告らと被告との交渉
その後、原告らは、平成九年八月下旬、原告らのひとり叶精作がたまたま本件書籍が書店に並んでいるのを見て初めて本件著作権侵害の事実を知り、同年一一月四日、原告らのうち叶精作、塚崎健吾、駄場寛、福間晴耕及び寺田克也五名は、被告に対し、著作権侵害の抗議と良識ある円満解決を目指した謝罪広告等の和解案の申入れをおこなった(本件の仮処分事件御庁平成一〇年(ヨ)第二二〇〇九号事件[以下本件仮処分事件と略称]の疎甲第三号証参照)。
しかし、これに対し、被告から、同年一一月一四日、弁護士名で、本件書籍を原告らに無断で出版した事実は認めたものの、にもかかわらず、肝心の損害賠償や謝罪広告の要求には一切応じられないという著作権侵害事件としてちょっと信じられない非礼な回答、さらにまた、実際は本件著作物のデータを被告の元に保存しておきながら「保存機器からのデータ削除は完了しております」という虚偽の回答をする(その理由については、本件仮処分事件の疎甲第五号証塚崎陳述書の3頁のaで説明)という回答書が届けられた(本件仮処分事件の疎甲第四号証参照)。
そこで、この五名の原告らは、被告が根本的にはこうした著作権無視の横暴な態度を何一つ改める気がないことを悟り、かくなる上は、正式に公的な救済を求めるしかないと決断し、そこで、代理人を選任し、同年一二月下旬、劇画家及びイラストレーターとして著名な平田弘史氏及び加藤直之氏の支援の下に、今回、同じく著作権侵害の被害を受けた(日本中に散らばっている)他の著作権者に対し、訴訟参加の呼びかけを行ない(本件仮処分事件の疎甲第六号証の一〜三参照)、その結果、一六名の著作権者がこれに賛同したものである。
すると、こうした原告らの動きを知った被告会社の代表取締役和田光太郎は、そこで原告らの憤りの深さを思い知り反省するどころか、こともあろうに、原告らが訴訟参加を呼びかけた各著作権者に対し、年末から年始にかけて、負けじとばかりに、電話で本件書籍に関する著作物の利用を事後承諾してほしいと懇請するという行為に出たのである(本件仮処分事件の疎甲第五号証塚崎陳述書の五頁参照)。
こうした行動のうちには、被告の著作権無視の横暴な本質が余すところなく見て取れる。さらに、日本の著作権者には手の届かない海外において、堂々と海賊版同然の販売行為を行う点においても悪質なこと極まりない。その上、被告は、今回の出版物を足がかりに、もっかこの種の書籍の刊行を積極的に進めており、再びこうした無断出版行為がくり返される虞れが大いにある(本件仮処分事件の疎甲第五号証塚崎陳述書の六頁参照)。それゆえ、原告らは、そもそもの無断出版行為といい、その後の非礼な回答書といい、さらにこのたびの厚顔無恥な著作権者らの抱き込み工作といい、海外での海賊版同然の行為といい、首尾一貫して著作権を無視して止まない被告の横暴で悪質な行為を断じて容認することができない。
のみならず、本件の著作物は、デジタル著作物としてコンピュータにより誰でも容易に複製・加工・編集・送信ができるという特質を有しており、それゆえ、これだけ堂々と首尾一貫して著作権侵害を実行し、今なおデジタル著作物のデータの削除に関し真っ赤な嘘をついている被告に対して、本件の著作権侵害以外にも、被告の元でMO等の記憶媒体に保存されている本件著作物のデータそのものが、原告らが知ることが極めて困難な形で、例えば海外などでひそかに販売されているのではないかという大いなる危惧を抱かざるを得ない。
五、仮処分の申立
そこで、原告らは、本件がデジタル時代におけるこうした新たな著作権侵害問題をはらんだ重要な事件であることを自覚し、一方で、インターネット上に「デジタル時代の著作権問題 デジタルアーティストは著作権侵害といかに闘うべきか----AG出版「マックでデザイン」問題-----」というホームページを開設し(そのURLはhttp://www.bekkoame.or.jp/~kengyu/cyosaku.html)、デジタル著作物をめぐるこのような悪質極まりない著作権侵害事件の根絶を目指して世界に向けてアピールしていくと同時に、他方で、著作権者の地位を保全するため、本年二月、東京地方裁判所民事第二九部に出版差止の仮処分の申立を行ない(事件番号平成一〇年(ヨ)第二二〇〇九号事件)、本件仮処分事件において、原告らは条理に適った適正な和解成立を目指したものの、被告の不誠実な対応と出版差止の決定を免れるために(実際は堂々と店頭で販売していたにもかかわらず)「本件書籍はもはや店頭にはなく、出版差止の意味がない」などと虚偽の主張に出るという態度により(その詳細は、本件仮処分事件の債権者準備書面_参照)、和解が不可能となり、本年五月二八日、原告の申立を認める決定が出るに至ったものである。
しかるに、被告は、出版差止を命ずる右決定が出たのちもなお本件書籍の販売を続け、仮処分決定から二ヶ月後の本年七月二七日、原告のひとり唯登詩樹こと加藤正がこれを発見し、購入したうえ(甲第一号証)、書店に事情を問いただすと、
《出版社から本の回収命令は来ていない》
ということであった。ところが、このような法に対する悪質な挑戦とも言うべき無法行為に対して、被告は、原告らに対し謝罪等を表明するどころか、その反対に、同月三〇日、被告代理人名で、原告代理人宛てに抗議文を送りつけるありさまであった(そのやり取りは、甲第二号証、同三号証参照)。
六、差止請求
そこで、原告らは、引き続き本訴を提起し、本件著作物の著作権の侵害を停止・予防するために、著作権法一一二条一項により本件書籍の出版差止及び同条二項により侵害の予防に必要な措置を求めた次第である。
とりわけ、本件著作物はデジタルの形式であるため、被告のような無断利用を企む者の手にそれが渡ったあかつきには、いかようにも悪用することが容易に可能となり、原告らにとって、この点こそが極めて憂慮すべき一大事であり、本件書籍の出版差止以上に切実な問題にほかならない。その意味で、今後、本件著作物の著作権侵害を予防するためには、被告がMOその他の記憶媒体に保存している本件著作物のデータを消去する措置を取ることが必要不可欠である。
よって、請求の趣旨第一項及び第二項に記載の通りの判決を求める。
七、原告の損害
被告がこれまで複製した本件書籍の冊数は、被告の主張によると、二千冊を下回ることはあり得ず(本件仮処分事件の平成一〇年五月一四日付債務者準備書面の本文冒頭参照)、また、本件著作物のようなイラストを出版物として使用することを許諾する場合、許諾にかかる使用料は通常、定価の一〇%であるから、本件著作物の使用料相当額は、
定価4700円×20,00冊×10%×114頁/総頁数276頁=388,260.86円
を下回ることはない。
従って、被告は、右複製権の侵害に基づく財産的損害の賠償として、著作権法一一四条二項により、金三八万八二六〇円を支払う義務がある。
よって、原告は被告に対し、請求の趣旨第三項に記載の通り、金三八万八二六〇万円及びこれに対する訴状送達の翌日から支払済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
以 上
証拠方法
一、甲第一号証 本件書籍購入の領収証
二、甲第二号証 被告より原告代理人宛てにFAX送信された抗議文
三、甲第三号証 これに対する原告らの回答
一、検甲第一号証 被告発行の別紙書籍目録記載の書籍
二、検甲第二号証 被告発行の書籍「MAC DE DESIGN Vol.2」
添付書類
一、委任状 21 通
一、会社の登記簿謄本 7 通
平成10 年 11 月 5 日
右原告ら訴訟代理人
弁護士 柳 原 敏 夫
東京地方裁判所
御中